蟻の‘複眼’
もう半世紀程にもなる昔に‘走査型電子顕微鏡’(Scannig Electron Microscope:SEM)で‘蟻の複眼’を撮影したことがある。

SEM装置
http://www.kagawa-u.ac.jp/kenkyu/kougakukiki/n1_18.html

この写真のように今ではコンパクトになっているが、当時昭和43年頃のSEM装置は、‘電子銃’部分が大きくて長く全体の装置の‘高さ’は、2.5m位はあったように思う。だから、フィラメントを交換するにも半日仕事であったが、今や交換は15分もあれば出来るほど周辺技術は進歩している。

蟻の手0001-2

蟻の手0002-2

蟻の手0003-2

蟻の手0004-2
白く見える‘破片’は、‘ごみ’である。

この蟻の種類も判らない。倍率も表示されていない。何とも‘不適格’な画像で申し訳ないが、当時からこのように‘SEM’では‘原理的に’鮮明な画像が得られた。

次のような解説ブログを見つけた。

http://app.m-cocolog.jp/t/typecast
/242831/203483/18213538

昆虫の目で見える世界

昆虫の眼は、個眼という小さな眼がたくさん集まった複眼と単眼の二種類があります。複眼を構成する個眼の数は昆虫の種類によって異なりますが、アリで約100個、ショウジョバエで約1000個、ミツバチで数千個、チョウやトンボでは1万個以上にもなります。多くの昆虫は複眼の間にいくつかの単眼をもっていますが、単眼をもたないものもいます。複眼はものをも見るための眼ですが、単眼は光の明るさを感じる働きをします。

アリの眼は5つあり、複眼が2つ、頭頂部に3つの単眼 をもっています。複眼の拡大写真を見ると個眼ひとつひとつの形が六角形になっていることがわかります。もし個眼が丸い形だとすると、光を取り入れることができない隙間ができてしまうことになります。六角形だと隙間なく個眼が並ぶことになります。

昆虫は複眼でどのようにものを見えているのでしょうか。よく複眼の見え方の例として、ひとつひとつの個眼に物体の像をひとつずつ描いた図を見ることがあります。しかし、実際には、ひとつひとつの個眼で物体を見ているのではなく物体全体を複眼全体で捉えています。つまり、個眼ひとつひとつには、物体の各部分の倒立した像ができていることになります。あるいは、もっと単純に、まるでデジタルカメラのCCDセンサーのように個眼ひとつひとつで物体の各部からやってくる光を捉えていると言った方がわかりやすいかもしれません。



私が‘蟻の複眼’をSEMで撮影をした目的は、‘昆虫の研究’と言う訳ではなかった。

当時の我々の研究に役立つ走査型電子顕微鏡(SEM)の威力を理解して貰うために、誰でも聞いたことがあるが‘見た事のない’画像でアピールしようというものだった。

したがって、蟻には‘複眼’があることは知っていたからそれだけのことで、‘単眼’が3つ有る事は知らなかったから、残念ながら‘単眼’のSEM写真は私自身の資料の中には無い。そして‘複眼を構成している個眼’が‘六角形’であることにも注意が払われていないから、‘な~るほど、六角形だわい!’と言う画像もない。 ‘無知’ということは、こんなにも情報にならないものなのである!

そこで、ネットから蟻のSEM 写真を拝借。細部がよ~く見れるようにとのご配慮からだろう、通常の見せ方と‘天地’が逆転していることにご注意を!

蟻の頭部SEM12529
http://www.pref.oita.jp/soshiki/13002/denken-mushi.html
蟻の頭部

蟻の単眼SEM12530
http://www.pref.oita.jp/soshiki/13002/denken-mushi.html
蟻の‘単眼’

蟻の複眼SEM12531
http://www.pref.oita.jp/soshiki/13002/denken-mushi.html
蟻の‘複眼’

誠にお見事な画像である!(感謝!)

そこでやはり気になったのが、上記の引用文献での解説の表記。

「・・・。複眼を構成する個眼の数は昆虫の種類によって異なりますが、アリで約100個、ショウジョバエで約1000個、ミツバチで数千個、チョウやトンボでは1万個以上にもなります。・・・」

‘アリで約100個’は‘ナシ’である! 何かの間違いに違いない。
どちらの写真画像も複眼の中の‘個眼’が、‘100個’ではない。
千から数千個ぐらいの感じである。

他人様の‘画像’を勝手に操作してはならないが‘悪用する’積りは当然ない。‘活用’させてもらうために一部分を‘拡大し、コントラストを強く’して見た。これでやっと‘六角形’と判断出来る。

蟻の複眼SEM12531-2

次の‘?’は、複眼で見た場合、実際には彼らには‘どんな風に’見えているのだろうか?上記の通り少しの解説はあるが・・・。

http://www.elsa.hokkai-s-u.ac.jp/~oka
zaki/cambridge/aug/rep_0827.html

ハエの視覚

6月にケンブリッジ大学の動物学教室の公開講座で動物の視覚の話がありました。 それまで全然知らなかった、実に興味深い世界の話でした。

動物の体の大きさと目の焦点距離の間には下の図のような関係(体が大きいもの ほど目の焦点距離が長い)があります。ほとんどの動物は図の2本の曲線で囲 まれた領域にはいります。シロナガスクジラは地球上でもっとも 大きな動物ですから、シロナガスクジラが大きな目、したがって焦点距離も長い目 を持っているのは不思議なことではありませんが、おもしろいことに、ワシも くじらと同じくらい長い焦点距離の目を持っています。 長い焦点距離の目は物体を大きく見ることができる目ですから、 ワシの場合は獲物を捕らえるために、目の焦点距離が極限まで長くなった わけです。ワシ以外にも、(ある種の)くもとカメレオンが、体のサイズに比較して 非常に長い焦点距離の目を持っています。ワシ、(ある種の)くも、カメレオンは、 全く異なる動物ですが、環境に適応して、 非常によく似た構造の目を持つことになったんだそうです。

動物の大きさと目の焦点距離の関係focallengths

前置きが長くなってしまいました。書きたかったのはハエの視覚です。 ハエは目が大きいし、複眼なので、なんとなく目が良さそうに思ってましたが、 実際には上の図からもわかるように焦点距離が非常に小さいので、 物体から20cmくらいの距離にまで近づかないとよく見えないんだそうです。 さらに、複眼だからよく見えるだろうと思っていたのは 大間違いで、複眼は目としては機能が劣っていて、像をあまりはっきり結ばない そうです。したがって、 例えばハエが僕を見るときには下の写真のような感じに見るんだそうです。

ハエが見た映像flyview



引用ばかりで申し訳ないが、次のような、これまた素晴しい解説もある。

http://aiaicamera.seesaa.net/article/2
6099547.html

複眼を真剣に考察してみるの巻

昆虫の目は、複眼と呼ばれるしくみになっています。
これは目の集合体で、1万とも2万とも言われる目が集まったものです。
トンボの場合は、半球面体の外面に1個1個の目が集まっており、それが左右ペアで頭部にセットされています。
この1個1個でとらえた像を脳の中で結び、風景を組み立てています。

このしくみはデジカメに言い換えればわかりやすくなります。
ひとつの画素が明るさや色を読み取り、それをジグソーパズルのように組み合わせて1枚の写真にするのと似ています。300万画素のデジカメは、300万の像を組み合わせて1枚の写真にしています。

よく間違いやすいのは、1個1個の目が像を結んでいるのではないということです。
トンボの前に人が現れた場合、1個1個のトンボの目に1人の人の像が映るのではなく、分割された一部分が映るということです。
例えば、1個の目には人の頭、1個の目には人の胸あたりというかんじです。
これらのひとつひとつの情報を組み合わせて、人の全体の形をとらえます。

しくみの話は以上ですが、それでは実際にどのように見えているのでしょう。ここが気になるところです。

ひとことで言えば、下の写真のような360度パノラマ写真になります。

360.jpg

ただ、360度パノラマ写真というのは横方向の連続であり、トンボの複眼は半球面体ですから、上下方向にも360度パノラマになるわけです。
上下左右360度パノラマということは、文字通りまわりが全部一度に見えているわけで、下の写真のような見え方をしているのかもしれません。

360-2.jpg

トンボも引力を感じてきちんと体を水平に保つわけですから、真ん中の空の面積が大きくなれば高いところを飛んでいると理解するでしょうし、小さくなればその逆と理解するでしょう。

以上、複眼の見え方について書いてみましたが、あくまでもこれは理論です。
実際には、後ろ方向を向いている目の数はかなり少なく、前左右方向に重点を置いた目の配置になっています。
背後から虫とり網でねらったときなどにトンボが首をかしげるのは、よく見えない後ろ方向を確認しようとしているところです。

このしくみと似ているのが、イージス艦のレーダーです。
イージス艦には6角形の板を4面にくっつけたフェーズドアレイレーダーというものがあり、これで360度監視しています。
厳密に言えば、さらに電波の位相を変えてくまなく見るしくみになっています。
だから、6角形の平面の板で90度の範囲のものを、さも真正面からとらえたように処理できるわけです。
トンボはこれができないために、首をかしげるのですw

いずれにしても、複眼のしくみというのはものすごい高度なシステムであり、人間さえも持っていない高等器官です。
進化の違いと言えば違いでもあり、広く浅く見えて繁栄につながったのがトンボ、その逆が人間ということになります。

なお、複眼を構成している1個1個の目は6角形をしています。
ハチの巣で有名なように、一定の面積に最大個数を隙間なく頑強に配置するのが6角形です。

かなり抜粋して書きましたが、詳細に書くと一冊の本ができあがって印税で幸せな生活をすることになりますので、このへんでやめておきますw



こんな素晴しい複眼の画像もある。

複眼 3e64cbb2
http://karapaia.livedoor.biz/archives/51971057.html

走査型電子顕微鏡(SEM)の価格は、半世紀前も現在も特殊なオプションを付けなければ、一式でおよそ‘1,500万円’である。年々技術は進歩し、低価格化が進んで価格が約半世紀ほぼ同じと言う商品も珍しい。

数億円の宝くじに当たった場合の大型購入物の第一の候補が‘これ’と前から決めている。

それ程‘SEM’で覗く‘顕微鏡の世界’は、‘望遠鏡で覗く天体’と同様‘おもろい世界’ なのである。





















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[2012/09/10 14:14] | サイエンス | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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