ワクチン(その2):‘がんワクチン’の治験について
昨日は、ワクチンの定義とここのところ急に表舞台に登場し始めた‘がんワクチン’の効果についての情報を少しだけ纏めてみた。

‘がんワクチン’の最大の特徴は、‘副作用’が極めて小さい、という事の様である。

色々な臓器等における‘がん’は転移という厄介な現象と共に普通の細胞に比べて‘成長速度’が速いという本質的な性質を持つために嫌がられる。

これまでの治療法の一つの特徴は、‘成長速度の減少’、つまりがんの進行を出来るだけ遅くするという、いわば‘消極的’な方法でもあった。

しかし、この‘ワクチン’法は、‘ペプチド’に注目して‘キラー細胞’が直接がん細胞を攻撃するという画期的な積極的方法である。しかも、副作用が少なくどの部署のがんにも効果があるという優れたがん撲滅方法だという。

前回の資料の続きを以下に。

http://www.gsic.jp/immunity/mk_06/09/index.html

2,3回の注射で劇的に効いた症例も

[ワクチン接種後の様子]
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ワクチン接種後に、腫瘍内にキラーT細胞がたくさん浸潤している(写真の中央部分)

中面さん自身は熊本大学助手時代の2001年、東大医科学研究所との共同研究の最中、正常細胞にはなく、肝細胞がんにだけ出ている、グリピカン3(GPC3)というタンパク質を発見した。そして、このGPC3タンパク質の一部のペプチドがワクチンとして有効である可能性を見出し、07年~09年、第1相臨床試験(第1段階の臨床試験)を行った。
具体的には、人工的につくられたGPC3のペプチドと同じペプチドを、進行・再発肝細胞がんの患者さん33人に、2週間の間隔をあけて3回注射して評価した。
「臨床試験では安全性も大事ですが、このペプチドを認識するキラーT細胞が増えるかどうかが1番のポイントです。キラーT細胞が増えなければ、効果が出るわけがありませんから。結果として、最もキラーT細胞が増えた患者さんは、2回のワクチン投与で50万個のリンパ球中に441個のキラーT細胞が出現しました。私たちの体内には1兆個のリンパ球があるといわれますから、単純に計算すると、2回の投与で10億個のキラーT細胞が誘導できたことになります。増えたキラーT細胞がちゃんとがんの中に入っていることも確認できました。
投与量は、0.3ミリグラム~最大30ミリグラムまで5段階に増やしていきましたが、投与量が増えるにつれ、キラーT細胞もまた増えることもわかりました」
あとは増えたキラーT細胞がどれくらいがんに効くかどうかだが、今のところ期待は持てるものの、今後の臨床試験でしっかり検証していく必要がある。
劇的な症例もある。肺や骨、リンパ節に転移していた75歳の女性では、鎖骨の近くに転移していた約5.5センチのがんが大きさで半分、体積にして10分の1になり、肝臓にあった約1.5センチのがん2つは消滅したのだ。
キラーT細胞の増加と生存期間にもつながりがみられた。50個未満で8.4カ月、50個以上で12.2カ月という結果だったのだ。副作用は、抗がん剤などよりはるかに少ないことも特徴だ。脇の下に打つ注射の跡がはっと目につく鮮やかな赤だが、痛みやかゆみはほとんどない。

まだ試験段階とはいえ、治療法が少なく、体力の落ちた進行・再発がんの患者さんには朗報といえるだろう。中面さんらによる最近の臨床試験でも、3ミリグラムのわずか2回のペプチドワクチンで、肝臓にたくさんあったがんがほとんど壊死に陥った症例が報告されている。


肝細胞がんの再発防止や、難治性の卵巣がんでも試験が

GPC3のペプチドワクチンによる試験は、ほかにも行われている。中面さん自身が中心に実施しているのは、日本人に多いHLA24とHLA2にくっつくGPC3のペプチドワクチンを使った試験で、肝細胞がんで手術などの根治的治療を受けたあとの患者さんに補助療法として行っている。
肝細胞がんはB型肝炎やC型肝炎がもとで発生するので、最初に根治的治療を受けても、どうしても再発しやすい。東病院でも1年で4割、2年で6割の患者さんが再発する。これをペプチドワクチンで何とか抑えられないかという試験だ。こちらはもう1段階進んだ、第2相臨床試験となっている。

[ペプチドワクチンで効果があった症例]
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ワクチンを3回接種した1カ月後、腫瘍が縮小、消失、壊死した。

[ペプチドワクチンの効果]
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キラーT細胞がリンパ球50万個中50個以上検出された場合、それ以下の 場合よりも生存期間が約4カ月延びたことがわかった。

1年間に10回ワクチンを打ち、次の1年間は何もせず経過を見る。量が増えると副作用である注射の跡の肌の赤みも強くなるので、投与量は3ミリグラム。まだ20カ月、1年以上経過したのは15人の症例しかないが、無再発生存率が上がってきそうな経過になりつつあるという。
「B型、C型をあわせると、日本には肝炎の患者さんが350万人いるといわれています。まさに『がんになりやすい人たち』がたくさんいる。試験も組みやすいのではと思います。まずは、肝細胞がんの再発を抑えられるかどうか検証し、そのあと、最終的な目標としてはがん予防ワクチンに取り組みたいと思います」
GPC3はほかのがん種でも出ているものと思われ、ワクチンの試験が進められている。
名古屋大学産婦人科では、抗がん剤が効きにくく、治療がむずかしい卵巣明細胞腺がんを対象とした第2相試験が始まっている。さまざまな小児がんに対する第1相試験も、国立がん研究センター中央病院ほか、5つの病院で共同で組まれており、最初の治療がまもなくスタートする予定だ。

免疫療法の評価が高まってきた

[進行肝細胞がんのGPC3由来ペプチドワクチン療法の適応]
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そんながんペプチドワクチン療法だが、つい最近まで、日本ではあまり評価の高い治療法ではなかったといえるだろう。
効果が明確に確認されていないから、もちろん保険診療は受けられないし、唯一、治療を受ける機会である臨床試験も、標準治療が効かなくなった進行再発がんの患者さんでないと参加できないなど、枠は狭かった。

2004年、アメリカのがん免疫療法の第1人者のローゼンバーグが、「がんワクチンに効きめなし」という論文を発表した影響も大きかったという。欧米の研究者はがんワクチン研究からかなり撤退し、日本でも「がんワクチンには期待できない」という空気が広がった。

しかし、状況は変わってきているようだ。そもそも、分子生物学の発達によって、細胞内のさまざまな物質の働きが急速に解明されつつある。加えて、医師主導試験という日本の独特の試験スタイルでコツコツと効果を検証してきた結果が、少しずつ積み上がってきたという。

日本では保険承認をめざす厳密な試験が、がんペプチドワクチンでは組みにくかったため、08年に厚労省が「先進医療開発特区」に認定した3つのグループを中心に、医師主導試験が行われてきた。その中から、がんが消えた、小さくなったなどの報告が増えてきている。結果、「私が現職についた5年半前、がんペプチドワクチンに製薬会社は見向いてくれませんでした。けれども、ここ2、3年、製薬会社が研究に関心をもち、共同研究に参加する機会も増えました。時代が変わってきているのを感じます


いよいよ本格的に‘がんワクチン’の時代に入ってきた感がある。これこそ、iPSにつづくノーベル賞候補だという気がしてならない!

がんばれニッポン!


(つづく)

次回は、NHKがつい先頃、この‘がんワクチン’について取り上げた‘最新情報’について。


















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[2012/11/20 02:37] | 健康と医療 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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