不動明王の仏像・仏画における‘眼と牙’の変遷
不動明王の‘仏画’を調べていたら、‘異常さ’に気付いた。

‘異常さ’というより、その‘顔’の描き方が全く違う‘二つ’の仏画(仏像)に出会った。

不動明王0004
NHK出版・NHKテレビテキスト・趣味工房シリーズ・あなたもアーティスト

このテキストに次の2枚の下絵が‘不動明王’として描かれていて、その違いの説明がない!

不動明王-2-2不動明王0001-2-2
NHKテキストの不動明王の‘二種類’の下絵

常識的には、不動明王は、その牙と目玉に特徴があり、その牙は、天を向いているのが一つと、あとの一つが地を向いている。そして、その目玉の一つはやはり天を向いており、もう一方が地を睨んでいるというものである。

不動明王 篠栗
http://www.geocities.jp/tttban2000/SL3326/gallery.html

南蔵院
不動明王

左眼は半眼、右眼はカッと見開き
目ん玉は左右で上下ひっちゃこっち

眉間にはシワ(水波)ば寄せて
下の歯で上唇ば噛み
牙はこれも上下食い違い

不動明王がどうして、こげな
恐ろしか顔ばしとんなるかていうとクサ

インドのドラヴィダ族ていう原住民が
西方から進入してきた
アーリヤ族に虐げられた
その苦しみの顔タイ

それで、弱かもんの苦しみが
分かっとるケン、取り除いてくれるとタイ




ところが、NHKのテキストの‘左側の絵’のように、牙の方向が二つとも地を向いており、目玉も真正面を睨みつけているのがあるというのである。
この辺の事情についての勉強不足から、つい‘ホ、ほんとう~?!’と叫んでしまった程無学である。

12-18_20121205121048.jpg
https://www.shinchosha.co.jp/geishin/2011_08/01.html
この京都・東寺の不動明王の画像からは、二つの‘犬歯’はハッキリとは判らない?

不動明王の像を日本に初めて持ち帰ったのは‘空海’だそうである。次のブログに以下のような解説がある。

http://ymd20hiro4.sakura.ne.jp/sub1_8.html
不動明王の牙

 不動明王は大日如来が人々の悪心を調伏するために忿怒の姿で現れたものであり、如来の命を受け、仏法を障害するものに対し怒りをもって対決する使者であるとされている。また、その威厳に満ちた容貌から、全ての災魔を屈服させると言われ、さらに難行苦行に立ち向かう修行者を守護する仏として信仰を集めている。五大明王の中央に座している明王が不動明王で、広く「お不動さま」と呼び親しまれている。古来より多くの人々の信仰を集め、日本における最も有名な仏様の一つである。

 インドで起こり、中国を経て日本に伝わったものである。日本では密教の流行に従い、盛んに造像が行なわれた。空海によって日本へ持ち込まれた不動明王の姿は、両眼を正面に見開き、前歯で下唇を噛んで、左右の牙を下向きに出した像で「平常眼」と呼ばれている。すなわち、両眼とも正面を睨み、上顎の前歯で下唇を噛んでいる姿をしている。左右の上顎犬歯は尖頭を下にして大きく伸び、下唇の外側にはみ出している。

 時代がすすみ、10世紀の天台僧・安然らの時代になると、「不動十九観」(不動明王の姿を19項目について解説)により、『大日経』などに基づく本来の不動明王像が見直され、不動明王の典型が完成してきた。右眼を見開き左眼は半開き、あるいは右眼で天、左眼で地を睨み(「天地眼」)、右の牙を上方、左の牙を下方に向けて出し(利牙上下出相)、左右非対称の姿の像になってきた。要するに、「天地眼」では右側の下顎犬歯は同側上唇の外側に上方を向いて突き出ており、左側の上顎犬歯は同側下唇の外側に下方を向いて突き出て、左右非対称の姿をしている。双方とも口は閉じて唇は強く結んでいるが、左の唇は外に向かって反転している姿である。右手に利剣、左手に羅索を持っている。(GAKKEN,不動明王より)


つまり、空海が日本にもたらした‘不動明王の姿’は、先に掲げたNHKのテキストの‘左側の絵’に近い表情をしており、およそ7~80年後になって、見直しがなされ‘右側の絵’のような‘典型’の画像になったというのである。

空海(774~835)は、802年、最澄(766~822)や三筆の一人橘逸勢(782~842)及び霊仙(759~827)と共に入唐する。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A9%BA%E6%B5%B7
第16次(20回説では18次)遣唐使一行には、最澄や橘逸勢、後に中国で三蔵法師の称号を贈られる霊仙がいた。最澄はこの時期すでに天皇の護持僧である内供奉十禅師の一人に任命されており、当時の仏教界に確固たる地位を築いていたが、空海はまったく無名の一沙門だった。


804年と言えば、凡そ、空海が30歳、最澄は38歳、逸勢22歳、霊仙45歳である。

何と言う‘恐ろしい天才達’であろうか? そして、当時の遣唐使・留学僧の留学期間は20年だったというのに、最澄は805年に1年間で、空海は806年に2年間で帰国している。それも彼ら二人は日本国にとっては貴重な予測以上の数の経文と成果を身に付けての帰国である。(橘逸勢の帰国年は不明? 霊仙は帰国せず)

さて、この大天才・空海は、大勢の人たちと関わって曼荼羅や密教法具の製作、経典の書写を行ない、真言密教と共にそれらを持ち帰っている。特に、それらの資料を基に、京都は東寺において‘立体曼陀羅’の造営に取り掛かる。残念なのはその完成を見ずに旅立ってしまうのである。

立体曼陀羅を安置する講堂は、空海の没年に完成するが、空海はこの完成を見ずに、同年没している。曼荼羅はその2年後に完成したという。

mandara.gif
http://www.touji-ennichi.com/info/koudo_j1.htm

この京都・東寺の不動明王の姿は以下の像に見る通りである。

不動明王(東寺)
http://masa71.com/ki-c.html
これが、京都・東寺の不動明王である。この顔の部分を拡大して見ると、

不動明王(東寺)-2不動明王-2-2
http://masa71.com/ki-c.html       右が、NHKのテキストの下絵の一つ。

NHKのテキストの‘左側の絵’そのものである。勿論、このテキストの中の原画の作者である‘松久佳遊’さんは、以下の経歴をお持ちの超一流の仏絵師だから、間違えられるはずはない!

不動明王0005-2

空海は、この不動明王の‘造形の変化’については、没後の事だから知らないのだろうが、この変遷を知ったらどう判断するのだろうか?

安然が唱えたとされる‘不動十九観’も含めて、不動明王の像容についての資料を引用しておきたい。

http://www.kyototsuu.jp/Temple/ButsuzouMyououFudou.html
【不動明王の像容】

 不動明王は、素直に仏法に従わない者を無理矢理にでも救済するために、
 目を怒らせた大変恐ろしい姿をしている


 不動明王は、肥満した童子形で、1面2臂で憤怒の形相が基本
 軽装で、法衣は片袖を破って結んで動きやすくしている
 右手には、降魔(ごうま)の三鈷剣(魔を退散させると同時に人々の煩悩を断ち切る)
 左手には、羂索(けんじゃく)(悪を縛り上げ、また煩悩から抜け出せない人々を救い上げるための投縄)
 背には、迦楼羅焔(かるらえん)(三毒を喰らい尽くす伝説の火の鳥の形をした炎)を背負う
 天地眼(右眼を見開き左眼をすがめる)(または、右眼で天、左眼で地を睨む)
 牙上下出(右の牙を上方、左の牙を下方に向けて出す)
 粗岩(磐石(ばんじゃく))の上に座して、
 「一切の人々を救うまではここを動かじ」と決意する姿

 <不動十九観>

 天台僧 安然が、「不動立印儀軌修行次第」により不動明王を想い従うために唱えたもの

 (1)大日如来の化身
 (2)真言中に、ア・ロ・カン・マンの4字がある
 (3)常に火生三昧(かしょうざんまい)に住んでいる
 (4)肥満した童子の姿で、卑しい
 (5)頭頂に七沙髻があり、蓮華をのせている
 (6)左肩に一弁髪を垂らす
 (7)額に水波(すいは)のようなしわがある
 (8)左の目を閉じ右の目を開いている
 (9)下の歯で右上の唇を噛み、左下の唇の外へ出している
 (10)口を硬く閉じている
 (11)右手に三鈷剣を持っている
 (12)左手に羂索を持っている
 (13)行者の残食を食べる
 (14)大磐石の上に安座している
 (15)色が醜く青黒
 (16)奮迅して憤怒している
 (17)光背に迦楼羅炎(かるらえん)がある
 (18)倶力迦羅竜が剣にまとわりついている
 (19)両脇に2童子が侍している


これで、不動明王の仏像及び仏画の‘変遷’について、かなりの理解が出来た。次回は、‘如来’様についての知見を広めるための検索を行う予定である。

(つづく)



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[2012/12/06 00:26] | 宗教 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top
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